井上逸兵のひとりごと
 
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2008年5月15+163日(またの名を10月25日)号
 
ポーランド便り
その2
 
© Ippei INOUE
 
ヴォツワヴェックというところに行くことは頭にあったが、学会のプログラムもよく見ていないどころか、自分の発表の準備すらできてない。でも頭の中ではできているのでぜんぜんあせってない。何となくいつも痛い目にあうパターンのような気もする。
 
思えば飛行機は長時間だったが、なぜかそれほど苦痛ではなかった。最近、こんなふうに何もすることなく長い時間ぼけっとできるということがなかったからかもしれない。
 
出発前日まで、さまざまな雑事に翻弄され、発表の準備にはまったく手がつかず、ついにパスポートを所持しないプリンター氏にご同行を願うことになってしまった。自分の発表は3日目なので、ま、あっちでレベル見てから準備しよっと。とか書いてる間に早くやれよ、とひとりさびしくつっこんでみる。
 
さて、ヴォツワヴェックには電車で向かわねばならない。あらかじめ駅のそばに宿をとっていたが、いざ駅に行ってみると、言ってることはもとよりさっぱりわからないが、文字が読めないというのがけっこうきびしい。英語の案内表示がもうちょっとあるかと思っていた。ドイツ語やフランス語やロシア語の知識もさっぱり役に立たない。もともとそんな知識があったか、考える余裕もなくなってきた。
 
幸い、切符売りの窓口は英語が通じた。どこでも乗れるように1等車の切符を買い、ホームに降りる。どのあたりで待っていたらいいのかまたさっぱりわからない。そうだ、比較的お金のありそうに見える人たちが待っているあたりにいよう。1等車だし。なかなか冴えてるぞ。一人でいるとひとりごとが過剰になる。
 
正解だった。今、列車のコンパートメントの中だが、僕以外に3人いる。一人は見るからにサラリーマンのお兄ちゃんだが、もう二人は少し年配の、クンクンクン、同業者のにおいがする。きかなくてもわかる。どこの国に来ても、大学教員のにおいは同じ。ほーら見ろ、一人は何やら草稿の校正をしはじめたぞ。ん?フランス語だな。もう一人はおそらくポーランド人だろう。ハードカバーの大きなノートを出してきて何やら書き込んでいる。
 
車内販売が来た。誰も何も買わないので行ってしまいそうだったので、呼びとめてコーヒーをもらった。すると、おじさんたちも、おれもおれもと次々にコーヒーを買い始めた。ちなみに「おれ」とは言っていない。あ、わかる?
 
においにつられたかな。何のにおいだ?(つづく)
 
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