井上逸兵のひとりごと2003年までのセレクション01

(このページは2003年までのひとりごとのうち比較的ご好評をいただいたものを多少改訂して再掲したものです。)

 

執筆意欲の高め方(200082日)

 

CIppei INOUE

 

 僕は書かなきゃいけないものがあるのになかなか筆がすすまないと、ふらりと本屋に立ち寄ることがある。そしてできるだけ多作の人の本をしばらく眺める。そうすると、この人はこんなにたくさん書いてすごいなあという気持ちがムクムクとわき起こり、何とか書く気になる(ことがある)のである。

 

 今日もそういう日だった。そしてふらりと渋谷のパルコブックセンターに立ち寄った(今東京)。そして誰だかよくわからない人の本をいくつか眺めていたら、なんとなくやろっかなあという気になったので帰ろうとした。ところが!すごいものが目に入ってきてしまった。そのフロアの一角に「ロゴス」というギャラリーがあるのだが、そこで「球界逸品展」なるものが催されていたのである。前野重雄とかいう人の野球界の「修羅場をくぐり抜けてきた『道具』たち」のコレクションが並べられている。数はそう多くないが、まったくもってシビレてしまった。

 

 王、長嶋、マーク・マクガイアらのバット。辻、篠塚、オジー・スミスら名手たちのグラブ。サンデー兆治時代の村田のグラブ。チャリティーオークションも行われていて、佐々木のマリナーズでの最初のユニホームは(もうコレクターの手に渡ってるんだな)57万円の値が付いている。そんなコレクションの中でも思わず息をのんだのは野茂がメジャーで初勝利をあげたときのユニホームとスパイクだった。あの忘れもしないキャンドルスティックパークの初戦、ドジャースタジアムでの初勝利の夜。あのときはいていたであろうスパイクがそこにある。トルネードを支えたナイキの右のつま先は激しく痛んでいた。まったく不人気なこのギャラリーに見物人は僕一人。少年のようなおじさんはしばらく立ちすくんでいた。

 

 執筆意欲がみじんもなく消えていたのは言うまでもない。

 

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