バカとおバカと

ひとりごと

© Ippei INOUE

おバカタレントブームらしい。

小生もおバカ教授ブームを巻き起こそうとしたが、どうやら本業を危うくさせるようで、受け 入れられなかった。しかし、望みが持てることに、「おバカ教授」の「お」がとれたヤツとい う評判は勝ち得ている。

あんまりよく見たことがないが(最近テレビをゆっくり見る時間がないのだ)、どうもあのお バカと称される方々はそんなに知能が低いようには思えない。むしろ才気あふれるようにも見 えなくもない。おバカ、おバカというが、叔母か伯母かの区別がつけられない、世の多くの人 たちとそう大差はない。

「おバカ」と「バカ」とは明らかに違う。「おバカ」には愛が込められている。「バカ」は通常 相手を非難することばである。ちなみに、おネエ系が「おバカ!」という場合の意味はまた違 うので、バカには3種類はあることになる。さらにちなみに「バカボン」となると人間の等級 が格段に上がるので、ここでは議論から除外すべきである。

何だか言語学っぽくなってきたので、このまま突き進もう。たしか、ほんとに言語学っぽくこ ういうことを書いたことがある気がしてきた。

人の「お株」を奪っても犯罪にはならないが、人の「株」を奪うと警察にごやっかいになるこ とになる。おにぎりを「まる」にするとかわいくて食べちゃいたくなるが、おにぎりを「おま る」に入れると、とたんに食欲が失せるのは世の常である。読者諸兄も一度試してみるとよい。 「負け」はたいがい嫌われるが、そんな人でも「おまけ(御負け)」は喜ぶ。そんなもんだ。 言語学は人間のサガを見抜くことができるのだ。

かように、「お」をつければ何でも丁寧語になるというのはまったくの誤解で、言語はそんな に甘くない。ちなみに言語学も甘くないが、小生にだけは甘くしてほしい。

みそ汁を丁寧にいう「おみおつけ」は、大辞泉や明鏡では「御味御汁」と字を当てているが、 ほんとうは広辞苑(第5版、いま6版がない)のいうように「御御御付」であろう。「おつけ (御付)」→「みおつけ(御御付)」→「おみおつけ(御御御付)」とどんどん「御」を重ねて いったにちがいない(たぶん)。丁寧なのもいいかげんにしろってんだ。

丁寧すぎると嫌みになるというのも世の常だが、「お荷物」も「お生憎様」も「お上りさん」 も皮肉やあざけりを意味することがある。「おバカ」には愛情がこもっているのに、「お荷物」 は否定的になりうるのは、なぜか。知りたければ、小生の本を購入して読むと、その答えが見 つかるかもしれない。立ち読みや借りて読むと、たぶん見つからないだろう。言語学は不思議 なのだ。購入して読んでも見つからない場合は、言語学の不思議を呪ってください。

2008 年 4 月 1+159(やばい)日、てことは 9 月 6 日号

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