井上逸兵のひとりごと:謹賀新年号、のつもりが・・・

ひとりごと

 © Ippei INOUE

暗い世相に一服の清涼剤(寒い?)のようなニュース。

<<asahi.com ニュース>>(2009 年 1 月 21 日 21 時 4 分) 神奈川県は21日、食堂の食券を偽造したとして、横浜県税事務所(横浜市中区)の男性職員 (24)を同日付で停職6カ月の懲戒処分にしたと発表した。県人事課によると、男性職員は 昨年4~5月の連休中に、自宅のパソコンとプリンターで、同区内にある県庁舎の食堂の定食 用食券20枚(470円分と500円分を各10枚)を偽造。連休明けから6月3日までの間 に使った疑いがある。

定食の食券を偽造して停職。ちょっと時間が経ってしまい(この頃ひとりごとうとしていた)、 今は感動が薄れてしまったが、最初に NHK のニュースでこれを聞いた時は笑い転げて、自宅 の大理石の椅子から転げ落ちそうになったほどだった。

この程度の罪でニュースになるのは(最近の NHK のニュースはイカレてはいるけど)、公務 員に対する世間の風当たりの強さと相変わらずの偽造ブームを物語っている、と思われるかも しれないが、本当のところはそうではない。このニュースの価値は、ダジャレにある。「定食 券偽造で停職6ヶ月」。なんと心躍る響き。ネット上の他のニュースではダジャレが強調され ていたが、NHK のニュースではそれは隠蔽されていた。しかし、アナウンサーの鼻孔がわず かながら大きく開放されていたことを小生は見逃さなかった。笑ってなるものかと歯を食いし ばっているようでもあった(アナウンサーってたいへんね)。我が家の大理石のテレビならそ こまで観察することができるのだ。

それにしても、人はなぜダジャレを喜ぶのだろう。考えてみれば、知性がまだチンパンジー程 度の小さな子供でも喜びそうなことば遊び。無意味といえば無意味。無意味さに匹敵するもの といえば、清涼飲料自販機横の分別ゴミ箱(缶とビンと穴を分けても中いっしょだし)か、日 本の裁判員制度(裁判員と裁判官いっしょに評議したら、裁判官が主導するに決まってるし) くらいである。しかし、かの名作かいけつゾロリから古典落語まで、老若男女、古今東西、ダ ジャレをよろこんでいるところを見ると、どうもこれは人間の根源的な感性(か何か)に訴え かけるところがあるようである。

日本語に限った話ではない。アルツハイマー病は、英語では「オールツアイマー」って感じの 発音(Alzheimer’s disease)なので、Old-timer’s disease(「オールド・タイマー=昔かた ぎの人」の病気)とダジャレたりする(ほんとに Old-timer’s だと思っている人も結構いるら しいが)。ある米国人は小生の名前を聞いて、「イッペイ?オーケー、ユーペイ(You pay:お 前が払え)」とのたもうた。大理石の財布でひっぱたいてやろうかとも思ったが、うかつにも 笑ってしまった。

重要なことに、このダジャレなるもの、かの米国人もそうだが、一番喜んでいるのはダジャレ をこいている本人なのである。しかも、性別年齢分布でいうと、ダジャレをこく者は圧倒的に

オヤジであるという社会言語学的事実にも着眼しておこう。まわりを寒々とさせるのもオヤジ の得意技だが、その談話方略の一つなのだ(このひとりごとではそんなことは決してない(は ずだ)。

あまりにアカデミックに語りすぎて、肩がこってきた。自宅の大理石の風呂にでも入りたいと ころだが、風邪が抜けきらず、いまも自宅の大理石のベッドの上でひとりごちている。でも季 節は入試シーズン。この時とばかりに働かされる。つらい。

とにかく、遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

2009 年 1 月号(1 月 1+41 日)

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