執筆意欲の高め方

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僕は書かなきゃいけないものがあるのになかなか筆がすすまないと、ふらりと本屋に立ち寄ることがある。そしてできるだけ多作の人の本をしばらく眺める。そうすると、この人はこんなにたくさん書いてすごいなあという気持ちがムクムクとわき起こり、何とか書く 気になる(ことがある)のである。

今日もそういう日だった。そしてふらりと渋谷のパルコブックセンターに立ち寄った(今 東京)。そして誰だかよくわからない人の本をいくつか眺めていたら、なんとなくやろっか なあという気になったので帰ろうとした。ところが!すごいものが目に入ってきてしまっ た。そのフロアの一角に「ロゴス」というギャラリーがあるのだが、そこで「球界逸品展」 なるものが催されていたのである。前野重雄とかいう人の野球界の「修羅場をくぐり抜けて きた『道具』たち」のコレクションが並べられている。数はそう多くないが、まったくもっ てシビレてしまった。

王、長嶋、マーク・マクガイアらのバット。辻、篠塚、オジー・スミスら名手たちのグラ ブ。サンデー兆治時代の村田のグラブ。チャリティーオークションも行われていて、佐々木 のマリナーズでの最初のユニホームは(もうコレクターの手に渡ってるんだな)57万円の 値が付いている。そんなコレクションの中でも思わず息をのんだのは野茂がメジャーで初 勝利をあげたときのユニホームとスパイクだった。あの忘れもしないキャンドルスティッ クパークの初戦、ドジャースタジアムでの初勝利の夜。あのときはいていたであろうスパイ クがそこにある。トルネードを支えたナイキの右のつま先は激しく痛んでいた。まったく不 人気なこのギャラリーに見物人は僕一人。少年のようなおじさんはしばらく立ちすくんで いた。

執筆意欲がみじんもなく消えていたのは言うまでもない。

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