井上逸兵のひとりごと:ビーラー再考

ひとりごと

© Ippei INOUE

顔の傷(前号参照)のカサブタもようやく残すところ5平方ミリメートルくらいになった。一 時期は元の美しい顔を忘れてしまうほど唇が腫れ上がり、カルガモだとか、クチパッチ(たま ごっちのキャラクターらしい)などの愛称を頂戴したり、何をしゃべっても「グワッグワッ」 としか聞こえない、などと暖かく励まされたりもした。ちなみに、腫れのひいた今でも元の美 しい顔を思い出せないでいる。

この業界も歓送迎などの宴の多いシーズン。顔があまり宴席向きではないが、やむをえずマ イ・ストロー持参で参席していた。ストローで飲んでもビールはそれなりに美味であることは 新しい発見である。怪我の功名という諺のこれ以上のよい実例はない。「ビーラー」の定義に 「ストローでビールを飲んでもうまいと思える人」と加筆せねばならない(2005 年 12 月 15 日号および前号参照(ウザイ?はいはい)。

とはいいつつ、ストローで飲むとビールが別の味わいとなることは確かだ。が、そんなことに めげてはいけない。ビーラーたるもの、ゴクゴク飲むという快感に過度に依存してはならない のだ。チビチビとストローでビールを飲んでプハーと言えることもビーラーの重要な条件の一 つなのである。

それにしても、おもむろに懐よりストローをとりいだしてビールを飲むという図は、なかなか イケてるというか、ウケねらいが半分以上だったが、意外にも、ひかれた。若者たちの言うと ころのドンビキと形容されるべき状況だったと推察される。傷よりも憐れみの視線の方が痛み を感じさせることがあるのを知って、少しだけオトナになった気がする。

宴席で近隣の方からストローで飲むと早く酔っぱらう、などと理科の先生のようなことを言わ れたが、酔っぱらうかどうかは重要な問題ではない。それにいつもと特段に変わりはなかった。

ちなみに、最近は酔っぱらってもシラフでも頭脳の状態に大差なく仕事ができる。飲んで帰っ て仕事をすることもある。かなりオトナな気分だ。ただし、酔っても頭脳がさえているのか、 シラフの時も酩酊時と同程度の頭脳の状態なのかは不明である。さらに、酔っぱらって階段で すっころんでおきながらそんなことを言うヤツの仕事を信用すべきかはそれ以上に不明であ る。

それにしても、今年になってたった一月半の間に、四十肩になるわ、美顔に怪我するわ、災難 続きである。残りの十ヵ月にいったい何が起こるのだろうか。不安になっていいのか期待して いいのか、悩みは深く、またビールを飲まざるをえない。ビーラー道は険しいのである。

2008 年 2 月 15+11 日号

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