わが兵を逸する

© Ippei INOUE

我が機動部隊のケータイが墜落事故により戦列復帰不可能のもよう。

いまケータイない。駐車場の地下層で瀕死の状態と思われる。別機で連絡をとるも、応答がな い。勇壮な呼び出し音のなることもなく、ただ、留守電姫の声が弱々しく窮状を代弁するのみである。自分のケータイに電話などしたことがないので、こんな姫に世話になっていたとは知 らなかった。むろん、姫にねぎらいの言葉を忘れるような不義理はしない。しかし、それに対する返答はなかった。まさかエリカ様みたいなつもりじゃああるまいな。

まあそれは寛大に許すとして、ひょっとして、ここ数日の間に小生のケータイに電話やメール をくださった方にはご不快な思いをさせているかもしれない。こちらについては、お許しを請わねばならない。

アドレスやら電話番号のみならず、さまざまな情報のメモとしてケータイ兵を用いていたの で、途方にくれている。実のところ、親や兄弟の住所も電話番号もわからない。授業の教室番号がわからない。シャツのサイズもわからない。名古屋で泊まるホテルもわからない。ドッグフードのローテーションもわからない。ショックと被害はあまりに甚大である。

ケータイはあっという間に我々の生活の一部となった。しかし、なくなるとあらためて気づか されるが、ケータイが我々の生活に組み込まれているのではなく、我々の生活こそがケータイの中に埋め込まれている。ケータイは欠かせないどころか、生きる射程そのものなのだ。

もちろんこれは悲劇であり、喜劇である。

難しいことを書きすぎて、頭痛がしてきた。そんなことはともかく、これまで、小生とケータイで通信をしたことのある方、なおかつ今後も何らかのお付き合いをいただけるという方、たいへんお手数ではありますが、こちらまで、メールをいただけないでしょうか。

もう小生とは縁を切りたいという方におかれましては、やむを得ずあきらめます。ただし、奇襲攻撃にご注意ください。

とりいそぎ。

(11月吉日、ケータイ兵の救出に成功しました。奇跡的に無事でした。地下に潜っていた故 の音信不通だったようで。お騒がせしました。)

2007 年 11 月 1+1 日号

コメント